2021/12/27
検査科だより5:亜鉛の欠乏について
その症状、亜鉛欠乏かもしれません?!
最近、よく亜鉛サプリメントのテレビCMを見かけます。
今回は、「亜鉛」について私の知っている範囲でお話しします。
【ヒトの体内の亜鉛】
亜鉛は、私たちの生活の中では500円玉や乾電池などに使われている金属です。
実は、人間の生命維持には、金属も重要な役割を果たしています。そのような金属を必須金属(必須ミネラル)と呼ばれています。
カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、スズ、バナジウム、クロム、マンガン、モリブデン、コバルト、ニッケルの14元素が知られています。
人類は海の中で生まれ、陸上で進化したと言う生命海洋起源説を裏付けるようにヒトの血漿成分と海洋中のミネラルの種類と濃度がよく似ています。必須金属は多数のタンパク質や酵素の中に存在し、体内で様々な化学反応を司っています。
亜鉛は成人の体内に約2g存在し、主に皮膚や骨、肝臓、眼球、筋肉などに含まれています。
約200種類以上の酵素の構成成分の一つでもあります。
【亜鉛が不足すると・・・】
- 味覚障害・・・食べ物の味は、舌にある味蕾という器官で感じ取ります。味蕾は新陳代謝が活発で約4週間のサイクルで生まれ変わります。亜鉛はこの働きを促しており、不足すると味覚障害が起こることがあります。
- 皮膚炎・・・亜鉛は皮膚や粘膜、爪の状態を良好に保つのに役立ちます。原因疾患のない、かゆみを伴う皮膚や慢性湿疹や爪の異常も亜鉛欠乏が関わっていると考えられています。
- 脱毛・・・亜鉛不足=脱毛症ではありませんが、原因の一つ。
- 口内炎・・・亜鉛不足で口腔内の免疫力が低下します。
- 食欲低下・下痢・・・亜鉛が欠乏すると消化管粘膜が萎縮するため、消化液の分泌減少や消化管運動が低下します。ひどくなると慢性の下痢を起こすことがあります。
- 生殖機能障害・・・男性では、精子や男性ホルモンのテストステロンの生成に関与しています。不妊男性では亜鉛の不足が見られ精子の運動率と精子数に関わっており、ED(勃起不全)を引き起こすと言われています。
- 傷が治りにくい・・・亜鉛が不足すると傷の修復能力が低下します。
- 免疫力の低下・・・亜鉛は免疫機能の関わりのある細胞の働きに影響があります。不足すると免疫力が低下し、肺炎などの感染症にかかりやすくなります。自己免疫疾患も亜鉛の低下に関わることがわかっています。
- 貧血・・・貧血=鉄不足といったイメージが強いかもしれませんが、実は亜鉛も酸素を運ぶ赤血球を増やすのに欠かせない栄養素です。
- 成長障害・・・亜鉛は細胞分裂・細胞増殖に不可欠なミネラルです。多くの酵素の構成成分となり、タンパク質やホルモンの合成、DNAの複製などに深く関わります。そのため亜鉛欠乏により乳幼児や子供では成長障害を起こすことがあります。
- 骨粗鬆症・・・亜鉛は、骨を作る栄養素の一つです。
【亜鉛不足の原因】
足りなくなる原因は 偏った食事や、極端なダイエットにより亜鉛の摂取量が不足していると近年指摘されています。
亜鉛は肉類や魚介類などに多く含まれています。食物繊維や青菜に含まれるシュウ酸は亜鉛の吸収を阻害するために、肉類や魚介類を食べないベジタリアン、ビーガンなどは不足しやすいミネラルと言われています。
亜鉛の摂取量不足だけでなく、亜鉛の吸収を阻害する食品添加物(ポリリン酸など)を含む加工食品やレトルト食品を多く利用することも、亜鉛不足を招きます。
お酒をよく飲む方も注意が必要です。アルコールの代謝に関わる酵素は、亜鉛を材料としています。お酒を飲むことで体内の亜鉛が使用されるだけでなく、アルコールは尿中への亜鉛の排泄を促します。
【アスリートやスポーツ選手に多い亜鉛不足】
亜鉛は汗や尿から排泄されるため、実はアスリート・スポーツ選手では不足しやすい栄養素です。スポーツで引き起こされる貧血をスポーツ貧血と呼びますが、その中の一つに亜鉛欠乏性貧血があります。 疲れやすい、集中力が下がるなどで、パフォーマンスの低下を招く可能性があります。
解消するには 亜鉛はすべての細胞に含まれるので、肉・魚介・種実・穀類などの多くの食品に含まれています。特に多いものとしては牡蠣、あわび、たらばがに、するめ、豚レバー、牛肉、卵、チーズ、高野豆腐、納豆、えんどう豆、切り干し大根、アーモンド、落花生などです。(嬉しいことに酒の肴となるものが多い。でも飲み過ぎには注意します。) 偏食や極端なダイエットを避け。一汁三菜のような食事を摂ると、亜鉛は十分摂取できます。亜鉛は、体内で作ることができません。食事で補います。どうしても難しい場合は、サプリメント等で補いましょう。
【まとめ】
細胞の新陳代謝に欠かせない亜鉛は、髪・肌・味覚・免疫機能・生殖機能など体内の至る所に関わっています。
加工食品を減らし、お酒は嗜む程度にし、亜鉛を多く含むタンパク質食品を主菜にした自炊生活を、目指しましょう。