2024/05/27
脱腸の原因と最新治療法!鼠径ヘルニアの全て
鼠径(そけい)とは足の付け根部分を言い、ヘルニアは体組織の一部があるべき場所からはみ出してしまう状態のことで、それによって引き起こされる疾患を鼠径ヘルニアと言います。
鼠径ヘルニアは一般的に「脱腸」と言われ、乳幼児から高齢者まで幅広く発症します。本来、腹部にあるべき腹膜や内臓の一部が外に飛び出すため、初期でしたら押さえれば整復されるものが固くなったり元に戻らなくなったりすると、腸閉塞や腸そのものが壊死するなどして死に至ることもある怖い病気と言われています。
鼠径ヘルニア(脱腸)とは?
内臓は丈夫な筋肉によって腹腔の中に納められていますが、お腹の内側から強い力が加わると足の付け根に飛び出してしまうことがあります。
腸のみならず、時には膀胱が飛び出すこともあり、その症状は立ち上がったり、お腹に力を入れた時に足の付け根(鼠径部)が膨らみ、引っ張られるような違和感や痛みを感じます。男性の場合、その膨らみは陰嚢にまで及ぶこともありますが、立位で膨らんでいたものが横になると元に戻ることがあります。
鼠径ヘルニアは特に40歳代の男性に多く見られ、腹圧のかかる製造業に従事している方や便秘症の方、肥満の方、咳をよくする方などは力むことが多いので注意が必要です。
初期のヘルニアは膨らんだところを外部から押して整復できますが、症状が進むと出っ張りが元に戻らなくなることがあり、これは 嵌頓(かんとん) と言って、強い腹痛や激しい嘔気嘔吐を引き起こします。
更に腸は締め付けられるために血流が止まり、やがて腸そのものが壊死し、最悪の場合、死に至ることがあります。
出っ張りがなくなって治ったかのような錯覚に陥ることもありますが、実は腸が壊死して破裂した結果と判断すべきです。
鼠径ヘルニア(脱腸)が怖い病気と言われるのは、まさにこの腸管壊死がその所以なのです。
鼠径ヘルニア(脱腸)手術法
鼠径ヘルニアは放っておいて治る病気ではありません。根治的治療は手術です。その手術法ですが、従来は飛び出した部分を切り取って周囲の筋肉などで塞ぐ方法が専らでしたが、近年は飛び出した部分を安全仕様が確立されたメッシュ(ポリプロピレン素材)で補強する方法がとられています。
当院では、腹腔鏡を挿入してヘルニアの出所を観察し、鉗子を用いてヘルニアの袋を引き出して弱っている部位をメッシュで補強します。従来の手術法は約5㎝ほど開腹していましたが、腹腔鏡手術は傷口が小さく整容的であると同時に回復が早く入院期間が短いなど、また、再発症例に関しても容易に発見できる多くの利点があります。