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2024/07/29

リウマチとは?原因から治療法まで徹底解説

関節リウマチとは

関節リウマチ(以下「リウマチ」)は、免疫の異常により、主に手・足の関節が腫れたり痛んだりする病気です。進行すると、骨や軟骨が壊れて関節が変形し、関節を動かせなくなり、日常生活に大きな支障を来します。また、炎症は関節だけでなく、肺・目などの全身に広がる場合もあります。

明確な原因は未だ不明ですが、何らかの原因で体の免疫系に異常がおき、自分の組織(関節を守る組織・骨・軟骨)を自分のものではないと判断して攻撃する自己免疫性疾患と考えられています。

遺伝性疾患ではありませんが、リウマチにかかりやすい遺伝的素因が存在します。細菌やウイルスの感染、過労やストレス、出産や外傷をきっかけに発症する場合も多く、発症に環境因子の関与が指摘されています。

 

リウマチの症状について

両側の手首・足首や手指・足趾の関節が腫れて痛み(関節炎症状)、朝起きたときにこわばりを覚えるのが典型的な症状です。左右対称に起こる手・足の関節炎がリウマチの特徴ですが、肘・肩・膝・股関節などの大きな関節にもひろがり、進行すると痛みや変形のために日常生活が制限されるようになります(図1参照)。

リウマチの症状は関節だけでなく、微熱・貧血・全身倦怠感などの全身症状を伴う場合があります(図2参照)。

治療のポイントは、発症早期に診断し適切な治療を開始することです。発症年齢は、どの年代でも起こりますが特に20歳代から50歳代に多く発症します(図3参照)。

リウマチの診断

臨床症状に加えて、血液検査・尿検査・画像検査(X線検査・MRI検査・関節エコー)などを組み合わせて診断を行います。

早期診断・早期治療の重要性が明らかになり、早期診断のための分類基準が2010年に米国・欧州リウマチ学会から提唱されました。我が国においても、その診断基準に準じて診断がなされています。各項目を点数化し診断を行います。

・主な血液検査項目:

①血沈 ②CRP ③抗CCP抗体 ④リウマトイド因子 ⑤マトリックスメタロプロテイナーゼ3(MMP-3)など

リウマチの治療

薬物療法を中心に、リハビリテーション・手術治療などを必要に応じて組み合わせて治療を行うのが一般的です。さらに日常生活での注意事項を指導する基本的治療が加わります。

薬物治療では、近年生物学的製剤の導入により、疾患活動性のコントロールが飛躍的に向上しました。その反面、感染症などの副作用や費用が高価であることなど、問題点もあります。

薬物療法について

関節リウマチ治療の中心となる治療法です。お薬には、疾患の進行を抑制する抗リウマチ薬、生物学的製剤、炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド剤、免疫抑制剤などがあります(図4参照)。

リウマチの診断がついたら抗リウマチ薬を主体にして、早期から積極的な治療を行うという考えが主流になっています。メトトレキサートの間欠投与(週に1~2回内服)が最も効果が高く、薬物治療の中心的薬剤となっています。

治療効果は数ヶ月ごとに評価され、効果が見られない場合は、薬剤の追加や変更が行われます。

 

リハビリテーションについて

・運動療法により、筋力の強化・維持を図り、関節可動域を維持します(図5参照)。

・温熱療法・超音波療法などの物理療法で疼痛を緩和します。

・器具療法・補助具使用により関節を保護し、不自由な動きを補います。

・各個人の状態に合わせた内容、運動量で行うことが大切です。

 

手術治療について

手指の腱が切れた場合や足趾が変形した場合には手術によって、修復・矯正を行います。

限局した関節の腫れには、滑膜切除術が適応です。膝・股関節、肘関節、肩関節、指関節の関節破壊による機能障害に対して、人工関節を用いた関節形成術が行われ、良好な成績が得られています。頸椎の不安定性が生じると、神経の圧迫でしびれや麻痺が出たり、酷いときは突然死の原因にもなります。それを防ぐために、頸椎の固定術を行うことがあります。

 

リウマチ外科手術の目的 除痛と機能回復が主たる目的です

①関節炎症状の改善・関節破壊の進行予防が主目的→滑膜除去術

②関節機能・運動機能の再建が主目的→関節形成術、関節固定術、頸椎手術

 

手術治療の傾向と注意点について

近年では、生物製剤の導入に伴い、疾患活動性のコントロールが向上し、従来に比べ膝・股関節などの大関節の手術がやや減少傾向です。しかし、手・足の小関節や肘関節などの手術が増加傾向になっています。

医療技術の進歩により、高齢の患者さんでも、積極的に手術治療が行われるようになりました。

関節リウマチに対する手術の実施に関しては、十分に経験を積んだリウマチ専門の整形外科医に相談することが大切です。

 

下肢の変形に対する手術

股関節や膝関節の大関節でリウマチ変形が進行すると、疼痛に加え歩行困難となり、移動機能の障害が大きくなり日常生活が著しく制限されます。

股関節・膝関節の変形進行例では、人工関節手術が積極的に行われます。(図6.7参照)

リウマチ足趾変形に対する手術

関節リウマチによる足趾の変形は、割と頻度が高く進行すると足の裏にタコ(胼胝)ができて、歩行障害の原因になります(図8参照)。

近年、足趾関節を温存した関節形成術を行う症例が増加しています(図9参照)。

 

上肢の変形に対する手術

手指・手関節・肘関節の変形が進行すると、食事動作や整容動作などの基本動作が阻害され、日常生活に支障を来す場合が少なくありません。かつては放置されていた変形に対しても、近年手術治療が行われ、安定した治療成績が報告されるようになりました。

肘関節の強い変形には、人工肘関節も行われています(図10.11.12参照)。手指の進行した変形に対し、シリコン素材の人工指関節を用いた関節形成術も行われています(図13参照)。

 

リウマチ手指変形について

リウマチ手指変形の代表的なものに、手指の尺側偏位があります。手指のMP関節部で、小指側(尺側)に傾く変形です。手指MP関節での滑膜炎の持続が原因で生じます。進行すると手の機能障害が進み、日常生活に支障をきたします。

軽症の場合は手指装具などが処方されます。重症化した症例では、これまで放置されている場合もありましたが、近年では専門医の下で手術治療が行われるようになり、安定した成績が報告されています。(図14.15.16.17参照)

 

リウマチによる頸椎病変について

・環軸椎の亜脱臼(水平脱臼)が生じ、不安定となる。

・主な症状は頑固な後頭部痛、進行する脊髄麻痺症状を呈する。

・進行例では、軸椎の頭蓋底陥入(垂直脱臼)を認める(図18参照)。

・椎骨動脈不全症状:めまい、気を失う等の症状もみられる。

さいごに

関節炎を主たる病変とする関節リウマチは、発症早期では、関節症状のみでなく全身症状も伴い、診断に苦慮することもしばしばです。進行した段階では診断もつけやすくなりますが、早期診断・早期治療の重要性が明らかとなった今日、発症初期の段階でリウマチ専門医の診察を受けることが大切です。

特にリウマチ外科治療では、患者さん各個人に適した治療計画をたてることが重要です。気になる症状やお困りのことがありましたら外来にてご相談ください。

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