2025/06/30
腦卒中ケアユニットSCU
脳卒中患者にとって最適な治療とケアを提供します。
脳卒中になるのは「危険因子」をそのままにしていた方々が大部分です。危険因子とは高血圧症、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病のほか、運動不足、肥満、睡眠不足、お酒の飲みすぎ、喫煙などがあります。 もちろん危険因子を全て取り除いたからといって、脳卒中発症がゼロになるわけではありません。しかし危険因子に対処することによって、リスクを減らすことができます。脳卒中は予防、そして脳卒中になった時には一刻も早く専門医を受診することが大切です。
脳神経・脊髄疾患治療部
本部長 鈴木 聡

SCUとは?
"StrokeCareUnit(脳卒中ケアユニット)"は、脳卒中患者の専門的な治療とケアを提供するために設計された集中治療室のことを指します。脳卒中は、脳への血流が阻害されることによって引き起こされる緊急性の高い医学的状態であり、迅速で適切な治療が重要です。 SCUは、脳卒中患者に対する迅速な評価、治療、監視を行うために設計されています。この集中治療室には、脳卒中に特化した医師、看護師、理学療法士、言語療法土、ソーシャルワーカーなど、さまざまな専門職が含まれています。 また集中治療室では、患者の状態を密にモニタリングし、治療計画を立て、リハビリテーションを提供することが一体となって行われます。 脳卒中患者にとって最適な治療とケアを提供することで、患者の回復を最大限に促進し、合併症を最小限に抑えることを目的としています。迅速な医療介入が脳卒中患者の脳への損傷を最小限に抑え、生存率と機能的な回復の可能性を向上させることが期待されています。
脳卒中は時間との勝負です。
どのタイプの脳卒中でも早いタイミングでの専門医受診が望ましいのですが、その中でも脳梗塞は時間との勝負です。脳梗塞治療においては、発症から一定の時間内に限って行うことができる画期的な治療法が開発されてきています。まず、「アルテプラーゼ静注療法」。 「アルテプラーゼ」という、血栓を溶かす薬を静脈内に点滴投与する治療法です。合併症として頭蓋内外に出血を起こすことがあり、何もしなかった場合に比べて死亡率が若干高くなります。しかし劇的に改善することも多く、日常生活に支障を来すような後遺症を残す事なくご自宅に退院できる人が増えます。この方法は脳卒中になってから、4.5時間以内に限って行うことが出来ます。

それからもう一つは「経皮的血栓回収療法」です。股のところにある大腿動脈からカテーテルを挿入し、病変部に至ります。「ステント」という、筒状の金網で血栓を絡め取ったり、掃除機みたいに太めのカテーテルで血栓を吸引したりする方法があります。この方法は、原則として発症から8時間以内に限って施行してもよい事になっています。しかし条件が揃えば、24時間まで延長されます。また、「エダラボン」は日本で開発されたフリーラジカル・スカベンジャー(脳梗塞の際に発生する活性酸素をつかまえて活性をなくすことにより、周囲脳組織のダメージを最小限に抑える薬)ですが、発症24時間以内に限って使用することが出来ます。2~3日経ってから来院されても出来ることはごく限られてしまいます。早い時期に来れば来るほど、色々治療の手立てがありますので、時間との勝負ということになります。休日や時間外であっても患者様を脳卒中専門医が24時間365日病院内に待機しているSCUであれば、治療開始までの時間が短縮できるのです。

発症から在宅に帰るまでのトータル診療。
脳卒中の場合、急性期治療は概ね1~2週間で終了しますが、その後も障害が残ることが多く、引き続きリハビリテーションが必要となってきます。そのような場合、当院では回復期リハビリテーション病棟を併設しており、他へと転院することなく院内で継続したリハビリテーションを行うことが可能です。また入院中は、当院地域医療連携室のスタッフが、患者様・ご家族のサポートにあたっています。退院後もサポートが必要になりそうな方々については、入院中から患者様・ご家族を交えて多職種で集まってカンファレンスを開きます。ご本人やご家族のご希望を伺った上で退院後のサポート体制を十分に整え、それから退院していただくようにしています。退院後のサポートは、地域のケアマネージャーが中心となって行いますので、入院中からケアマネージャーと密に連絡を取り、情報を共有するようにしています。