胃腫瘍とは?
胃腫瘍には良性である胃ポリープ・平滑筋腫・GIST(平滑筋原性腫瘍)・脂肪腫や、悪性である胃ガン・胃カルチノイド・胃悪性リンパ腫・胃平滑筋肉腫などがあります。
なぜ手術をするの?
悪性の腫瘍ができた場合、悪いところを含めて大きく胃を切り取る必要があります。
将来の再発を防ぐ意味で非常に大切なことです。また、転移したリンパ節を確実に除去できれば、手術後の生存率が高くなります。
胃ガンの発生は粘膜から!
胃ガンの進行
胃ガンの転移
術前検査
- 血液検査・腫瘍マーカー
- 胃カメラ
- 胃透視
- 腹部エコー
- 腹部CT
- 胸部・腹部レントゲン検査
- 心電図・呼吸機能検査
胃ガンの進行度・部位により治療法はいろいろ
腹腔鏡下胃切除術
- 腹腔鏡下手術は、手術器具の進化・手術技術の進歩により、現在では標準的な手術法です。
- 腹腔鏡下手術はキズが目立たず美容的で、術後疼痛の少ない手術法です。
- 入院期間が短く、費用面・精神面・生活面での負担が少ない手術法です。
手術後は・・・
- 手術後の食事は4日目頃から始め、最初は白湯(さゆ)や流動食から始めます。
- 手術の前に比べると胃が1/3になっているため、1回に食べられる量が少なくなります。
- そのため1日の食事量を 5~6回に分けてとることになります。これに慣れるまで少し時間がかかります。
術後合併症は・・・
これらの合併症は、通常術後2週間以内におこります。
2週間経過した時点で、これらの合併症が無ければ、それ以後に新たに発生する危険性はほとんどありません。
- 出血
- 縫合不全(つなぎ目がふさがらず、再び漏れを起こすこと)
- 感染(肺炎、創感染、腹腔内膿瘍)
- 梗塞(脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞)
- 腸閉塞(腸の癒着やねじれで、通過障害が起こること)
- 術後せん妄(幻覚や妄想、興奮などの一時的な精神症状)
胃ガンの進行度(ステージ分類)
ガンの浸潤の度合い(ガンの深さ)とリンパ節転移、遠隔臓器への転移状況で決まり、これら3要素を組み合わせてIA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IIIC、IVの8段階に分類されます。
胃ガンの深達度 (T因子)
T1a(M) | 粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない |
---|---|
T1b(SM) | 粘膜下層に浸潤する腫瘍 |
T2(MP) | 固有筋層に浸潤する腫瘍 |
T3(SS) | 固有筋層をこえ浸潤しているが、漿膜内にとどまっている |
T4a(SE) | 漿膜表面に露出している |
T4b(SI) | ガンが直接他臓器に浸潤している |
胃ガンのリンパ節転移 (N因子)
N0 | 領域リンパ節に転移を認めない |
---|---|
N1 | 領域リンパ節の転移個数が1~2個 |
N2 | 領域リンパ節の転移個数が3~6個 |
N3 | 領域リンパ節の転移個数が7個以上 |
胃ガンの遠隔転移 (M因子)
M0 | 領域リンパ節以外の転移が無い |
---|---|
M1 | 領域リンパ節以外の転移が有る |
MX | 領域リンパ節以外の転移の有無が不明 |
胃ガンの進行度(ステージ分類)
N0 | N1 | N2 | N3 | |
---|---|---|---|---|
T1a(M),T1b(SM) | IA | IB | IIA | IIB |
T2(MP) | IB | IIA | IIB | IIIA |
T3(SS) | IIA | IIB | IIIA | IIIB |
T4a(SE) | IIB | IIIA | IIIB | IIIC |
T4b(SI) | IIIB | IIIB | IIIC | IIIC |
M1(T,Nに関係なく) | IV |
<胃癌取扱い規約第14版>
胃ガンのステージ別 5年生存率
ステージ | 5年生存率 |
---|---|
IA | 93.4% |
IB | 87.0% |
II | 63.8% |
IIIA | 50.1% |
IIIB | 30.8% |
IV | 16.6% |
<日本胃癌学会 1991年度症例 2004年発表>
5年生存率とは、5年間再発しないということではなく、(状態はともかく)治療開始から5年後に生存している人の割合です。早期胃ガンといわれるステージⅠ期の5年生存率は90%ですが、病期が進行するとともに5年生存率は徐々に下がります。
胃ガンの化学療法
胃ガンに対する化学療法はフルオロウラシル(5-FU)、イリノテカン(略称:CPT-11 商品名:カンプト、トポテシン)、シスプラチン(略称:CDDP 商品名:ランダ、ブリプラチン)、タキサン系薬剤のパクリタキセル(商品名:タキソール)とドセタキセル(商品名:タキソテール)、そしてテガフール・キメラシル・オテラシルカリウム配合(商品名: TS-1;ティーエスワン)が生存期間を延ばすことができるキードラッグであると考えられています。これらを組み合わせて抗ガン剤治療は行われます。
術後の再発防止で推奨されている抗癌剤が「TS-1」です。生存期間の延長が見られました。 2011年2月にカペシタビン(商品名:ゼローダ)が治癒切除不能な進行・再発の胃ガンに適応となりました。
2011年3月に分子標的薬のトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)がHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃ガンに適応となりました。
年々、抗ガン剤の改良が進んできており、生存期間の延長がみられてきております。
一次化学療法
●HER2陰性の胃癌の場合
S1+CDDP(A)
Cape+CDDP(A)
S1+OHP(B)
Cape+OHP(B)
FOLFOX(B)
●HER2陽性の場合
Cape+CDDP+T-mab(A)
S1+CDDP+T-mab (B)
二次化学療法
wPTX+ラムシルマブ(A)(HER2発現に関わらず)
三次化学療法
ニボルマブ(A)
イリノテカン(B)
(条件付きで推奨される化学療法レジメン)
一次化学療法
●HER2陰性の場合
5FU+CDDP
5FU+LCV
5FU+LCV+PTX
S1
S1+DTX
●HER2陰性の場合
5FU+CDDP+T-mab
Cape+OHP+T-mab
S1+OHP+T-mab
二次化学療法
DTX
IRI
Nab-PTX毎週投与法
Nab-PTX+RAM
PTX毎週投与法
RAM
(2018年 胃癌治療ガイドライン)
おわりに
手術後は定期的に通院し、初めは3ヵ月毎に採血、レントゲン、超音波やCTなどの検査を行います。
手術後約2~3ヵ月ころに食事のあとで、お腹が痛くなったり、冷や汗が出たりすることがときどきあります。食事が一度に小腸に入ることによって起こり、ダンピング症候群とよばれています。
また、消化液が食道に逆流する逆流食道炎、貧血などが起きることがあります。術後は免疫力の低下で肺炎など感染症になりやすく、注意が必要です。膵臓を合併切除すると糖尿病の傾向が出る場合があります。
気になることがあれば、なんでも医師に相談してください。